約 1,319,785 件
https://w.atwiki.jp/10932tb/pages/614.html
【種別】 時間 / 第24話 【年月日】 1997年06月01日 消滅の危機を回避したジークがデンライナーで送ってもらった鷹山栞の強い記憶の過去の時間。栞の結婚式の日。 契約者との記憶のつながりが無くなり消滅しそうになったジークだったが、良太郎が栞にカードをかざすとこの日付が浮かびあがり、この時間に飛ぶことで消滅の危機を免れる。デンライナーを降りたジークはハナにお礼の意味を込めて抱きつくが、殴られ光の玉になりどこかへ消えた。 【関連するページ】 ジーク ライダーチケット 第24話
https://w.atwiki.jp/rocnove/pages/70.html
俺は昔、トリッガーと、こんな話をしたことがある。 どこでだったかは覚えてないが、その部屋の白さだけは鮮明だ。 「なぁジーク、なんでマスターはあんなにデコイにこだわるんだと思う?」 突然の質問だったが、たいして時間はかけずに答えられた・・・確か。 「そうだな・・・ たぶん、ここに住んでいるからじゃねえか? デコイたちは、俺たち「ヘブン」の者が持っていない物を、 いくつも持っているからな・・・ ・・・苦労、労働の喜び、そして死・・・ どれも、ここにはない物だ。 俺もそーゆうとこは結構好きだな。」 しかし、トリッガーは、あまり納得していないようだった。 だが俺は、気にせず続けた。 「そんでもって、向こうには、ここみたいな暮らしに憧れているヤツがいたりしてな。」 ここでトリッガー、多少呆れる。 「そんなモノかぁ・・・?」 「そうだろ。 そういうお前は、どう考えているんだ?」 トリッガーは俺よりも考えてる様子で、十秒ほどしてから答えた。 この辺の記憶もあまり定かではない・・・ 「正直言って、よくわからないんだ・・・ マスターの気持ちも、デコイたちが本当に大切なモノなのかも・・・」 (マジで悩んでるのか?意外にも。) 「ま、そんなに考え込む事じゃ無いだろ。」 そう言って、俺は立ち上がった。 わずかに覚えているのも、ここまでだ。 つくづく自分の記憶力の程度を思い知る。 だが、この様な会話を思い出すと、自分に対して疑問が生じてくる。 何故親友であったトリッガーと対立し、システム側に付いたのか。 トリッガーはデコイ達やマスターとの約束を守るために戦っている。 ならば俺は、何のために戦っているのだろうか。 トリッガーのように何かを守るためというのならば・・・はっきりしている。 ―――――セラ様だ。―――――― ロックは今、ヘブンに向かっている。 だんだん地球が小さくなっていくのを、不思議な気分で眺めていた。 (妙な感じだ・・・ これを逆回ししたような光景を、 僕は本当に見たことがあるのだろうか・・・) マスターとの思い出。 あれが自分の記憶だという、実感のない、不安定な記憶・・・ 「トリッガー、どうかした?」 ロックは、ハッとした。 白い船内。シャトルの中。 ロールのお母さんの身体をした人。マザー・ユーナ。 巨大な砲身をして、いくつもの銃口がある武器。ロールが作ってくれた、 急造の「ガトリングレーザー」。 「さっきから黙ってるから・・・」 ロックは、ため息をついて、 「僕に、システムが止められるんでしょうか・・・」 ユーナも、つられたようにため息をついて、 「はぁ・・・ だから言ったでしょ? 物事はあまり考えるモノじゃないって・・・ たぶん大丈夫よ。 やらなきゃいけないんじゃないの? 確かにあのコの戦闘端末は強いけど、きっと勝てるわよ! そのために、あのロールってコがそれを作ってくれたんだから!」 ユーナは、ロックの傍らにある、「ガトリングレーザー」を指して言った。 レーザーを射出する武器。 しかし、レンズ部分は間に合わせの物で作ったため、あまり無茶は出来ないという。 連射型の「ガトリングモード」と、 単発型の「パワードモード」になり、切り替えがきく。 「はい・・・ そうですよね・・・ でも、何か他にも何かありそうな気がするんです。 何でだろう・・・」 「そうねぇ・・あっ、あのコ! ロックマン・ジーク!」 ロックは記憶の底の方にこびりついていたその名前を思い出した。 (そうだ・・・ 始めてのディグアウトで会ったあいつは、ジークって名乗っていた! あいつの話の中でも、「セラ様」とかいう名前がでていたし、 ヘブンの人だったんだ・・・) 「あいつは一体なんなんですか?」 ユーナは、驚いた様子で、 「え?あなた、彼のことも思い出したの?」 そこでロックは、昔のディグアウトのことを話した。 「ふ~ん・・・そんなことがあったの・・」 急に、ガガが口を挟んだ。 「確かにジーク様は、セラ様に忠実でしたから、今来ても不自然ではありません」 「そうですか・・・でも、なんで僕はその時にやられなかったんでしょうか」 「そうねぇ・・」 ユーナの悩み方は、「なぜか」というよりも、 「言うべきか、言わぬべきか」で悩んでいるような感じである。 だがやがて、決心したように、 「たぶんそれは、あなたの、というより、トリッガーの機能ね」 「機能?」 ロックがオウム返しに聞いたが、ユーナは気にせずに続ける。 話を要約すると、こんな感じである。 トリッガーはリセットしたが、そのデータが、多少残っているらしい。 そして、リセット後の活動中に、身体的な危険が迫ると、データの内、 戦闘能力の部分だけを再生し、本人の意識とは別に、危機を脱するのだという。 ただ、本人の意識とは別とはいっても、あくまでも自分の身体なので、 意識して自我を保っていれば、発動しないとのこと。 「でね、ここからが大切なんだけど、この時の意識は、誰の物でもないの。 トリッガーでも、もちろんあなたの物でも・・・ それで、もしかしたら・・・元に戻れなくなるかも知れないの・・・」 「!」 ロックは心底驚いた。 当たり前である。 自分が元に戻れなくなるかも知れないのだから。 「だから使わないように心がけなきゃいけないの。 あのロールってコを悲しませちゃいけないもの」 ロックの答えはもちろん、 「わかりました。 自分の意識を保って戦うようにします・・・」 この話題は、ここで一段落した。 ガガはここで、もっともなことを言った。 「ところでユーナ様、なんでジーク様は今まで、 トリッガー様と戦いに来たり、 セラ様の封印を自分で解いたりしなかったんでしょうか。」 そういえばそうである。 プログラムを実行したければ、そのようなことをすれば良かったのだ。 ユーナは、気付いたように、 「そういえばそうね・・・ もしかしたら、管理人かも・・・」 「管理人?」 またもやオウム返しである。 だが、今度は返事が返った。 「そう、管理人。 ロックマンシリーズの管理人よ」 ガガが驚いた様子で、 「なっ・・・ あれは、実在していたんですか?」 「わからないわ。 でも、他には考えにくいのよ」 二人の話を聞いても、ロックは何もわからない。 「あの・・・どういうことなんですか?」 ユーナは、今度は本当にどう説明したらいいのか迷っているようだ。 そんなユーナに、考えようによっては、「助け」とも取れる出来事が起こった。 「ん~・・管理人ってのはね・・・ ロックマンシリーズに対して、絶対的な権限を・・・」 ここまで言って、 「ユーナ様! マスタールーム近くに高エネルギー反応! ロックオンされてます!!」 「なんですって!?」 その直後、シャトルを閃光がかすった! 衝撃。 「ディフレクター破損! ホロン機関停止!! 制御不能、落ちます!!!」 こんな時だというのにユーナは喜々とした様子で、 「ガーちゃん、居住区に落ちて! 手間が省けるわ!!」 「は、はい!」 声が裏返っている。 数秒後、ロックは、シャトルと、昔の人間の家の断末魔の叫びを聞けた。 ドグァシャァァアァァァア!!!!!!! 蒼い目を持った彼は落ちていくシャトルを見ていた。 (あれならばまだ死にはしないな。 すぐにここに来るだろう。 システムを・・あの忌まわしいシステムを破壊しに・・・) シャトルが地平線の陰に隠れたのを確認して彼は、 マスタールームへと入っていった・・・ (ん~~・・・ なんか凄い音がして・・・ そういえば管理人ってなんだろう・・・ そんなことより何が起こったんだろう・・・ もしかして死んだのかな・・・ システムも破壊してないのに・・・ こんな中途半端な状態で・・・ そういえばユーナさんは・・・?) ロックは思い切って目を開けた。 すると・・・ 「あらトリッガー、起きたの」 「あ・・・ここは、天国ですか?」 それを聞いたユーナは、しばらく考えてから笑いをこらえて、 「そうかもね。 ヘブン(天国)だし!」 とりあえずロックは、生きていることがわかった。 無惨な様である。 シャトルは見事に(とは言ってもほとんど原形をとどめてないが)地面に突き刺さり、 昔人間の民家まで巻き添えにしていた。 もっとも、巻き添えにしなければ、更に下まで落ちていただろうが・・・ ロックが苦労してシャトルの破片から、ガトリングレーザーを引っ張り出しているときに、 「これではもう再生は不可能でしょうね」 最も大きな「シャトルの破片」・・いや、ガガは言った。 「そう言わないの、ガーちゃん。 生きていた上に、近道まで出来たんだから儲けモンよ」 「はぁ・・・ でも、あの攻撃はやはりジーク様なんでしょうか」 「たぶんね」 ロックはロックで、ユーナに質問がある。 「あの・・・さっき言ってた・・・」 だが、聞こえない振りをされ、 「はいトリッガー、ヘブンについたわ。 早くマスタールームに向かいなさい。 そのゲートを適当に行けばいいわ! その武器を早く装備して!」 早口でまくし立てられ、為す術もなく追い出されて、 15分後には、マスタールームに入ることが出来た。 ユーナは一つの仮説を考えている。 もちろん、管理人についてである。 ロックを送り出したのは、一人で考えるためだ。 (おそらく、ジークを止めていたのは管理人。 でも、ジークは、何も理由も無く止められているのを納得しないでしょうね。 となるとトリッガーは、 デコイの「ロック・ヴォルナット」として認識されていたのかしら・・・ 「初期化」又は「再生」以外でデコイを殺すと、 「虐殺」と見なされ、何らかの処分を受ける事になるわ。 ジークがそこまで危険を冒してまでトリッガーを倒そうとするとは思えない。 でも管理人は、なんでそうまでしてトリッガーを守るんだろう・・・ まぁ、管理人を知らないから、これ以上は憶測の域を出ないわね・・・) ここでユーナは、もう一つの疑問に気付いた。 (でも、セラの封印を解くのなら、管理人が邪魔をするはずはないわ。 なのに、なんでジークは封印を解かなかったのかしら・・・ 封印がどこにあるのか知らなかったから? いや、違うわ。 調べようと思えば出来ない事じゃないもの。 となるとジークは、自分の意志で封印を解いてないないのかも・・・ そうかも知れない・・・ トリッガーが発見しなかったら、システムに対抗する者は現れなかった。 ジークは、迷っているのかしら。 システムに反する心と、マザー・セラに従う気持ちの間で・・・) ロックはマスタールームのただ長い道を進んでいった。 下へ下へ・・・ デジャビュ(既視感)が続いている。 もっともこれは、実際に来たことがあるからのだが。 やがて、最も下の階だと思われるところについた。 そこは、何か今までと雰囲気が違っている。 何か、哀しいような・・・ 長い通路を進んでいくと、見覚えのある人物がいた。 (なぜだろう・・・懐かしいような気がする・・・) ロックマン・ジーク・・・ 「来たか・・・トリッガー」 ロックは驚いていた。 ジークは、昔見たときと、全然変わっていたのだ。 姿の面では、大きな刀を背負っていたりするがほとんど違いはない。 そういうことでは無く、「感じ」が変わっている。 まるで、機械のように・・・ これがあの、感情的なジークなのだろうか・・・ 「イレギュラー、ロックマン・トリッガー確認。 これより、バトルスペースに移行する」 その瞬間、ジークを中心に波紋が広がっていった。 いや、部屋が現れたのだ。 先ほどの通路とは全く違う、白い、広い部屋・・・ その中で、ロックの青いアーマーが浮かんで見える。 ジークも白とはほど遠いが、こちらは不思議ととけ込んでいる。 「排除・・・開始!」 ジークの左手の、独特の形をしたバスターから、 さっきシャトルを落とした一条の光が放たれた。 「くっ・・」 ロックがとっさに側転で避ける。 光はロックの後ろにあった壁に当たったが、壁には傷一つ付いていない。 「反応はいいな・・・だが!」 ジークが、左肩に付いている八つの遠隔レーザーユニットの内、四つを射出する。 ロックを、四つの銃口が狙う。 (避けきれない!) そう判断したロックは、右手のガトリングレーザーの引き金を引いた。 連続して発射されるレーザーを受けて、レーザーユニットは沈黙した。三つだけ。 残った一つが放ったレーザーをロックは、伏せてかわそうとする。 が、左肩のアーマーにかすり、わずかな傷が付いた。 かまわずロックは、ガトリングレーザーによって残りの一つを破壊した。 ロックは引き金を引いたまま、本体であるジークに銃口を向ける。 しかし既に、そこには誰もいず、ロックが狙った相手は・・・ 「甘い・・・」 ジークはロックの後ろにまわり、 背負っていた「インフィニティ・ブレード」を振り下ろそうとしていた・・ ジークは、何のためらいもなく、巨大な刀「インフィニティ・ブレード」を、 片手で振り下ろす。 ロックはそれを、ガトリングレーザーのシールド部で受け止める。 ───キィン─── 巨大な銃身の側面には、装甲が厚くなっている部分があるのだ。 ロールはこう言っていた。 「この武器は大きいから、ロックの機動力が落ちると思うの。 だからその分、防御力を高くしておくから、覚えておいてね」 この武器を作ったロールはロックに、 「生き残って帰ってきて欲しい欲しい」と思っている。 ロックも、それを知ってか知らずか、「ロック」として自分を保ちつつ、 「生き残って帰る」ために必死である。 だからこそロックは、こうやって守りにまわりながら、 反撃のチャンスを待っているのだ。 しかし、いまはそう慎重にと言ってられる場合ではない。 そこでロックは少し、攻めにまわってみることにした。 ダダダダダダダ───────── シールドで身を守りながら、バスターを連射した。 「ちぃっ!」 二人とも右手がふさがっているため、接近戦になると、 左手のバスターの銃身が長いジークの方が不利になる。 そこでジークは、間を取り直すために、後ろに飛んだ。 その時、時間の間が生じる。 ロックは、バスターを撃ちながら、横っ飛びに移動する。 その先は、部屋の隅。 逃げ場がないため、不利に思われる。 「血迷ったか?」 ジークは残った四つのレーザーユニットを射出し、バスターのチャージを始めた。 が、それよりも早くロックは、ガトリングレーザーのモードを切り替え、フルチャージに すべくトリガーを押し込んだ・・・ 四つのレーザーユニットが、火を噴いた。 しかしそれは、突然の光に飲み込まれる! ガトリングレーザー「パワーモード」のフルチャージショットを、ロックが撃ったのだ。 部屋の隅にいれば、前方の目標に集中できる。 四本の銃口から同時に、高出力のレーザーが発射される! ───────キィィィィィィィィィ────────── ジークはバスターを撃ったが、チャージが間に合わず、30%程の出力で打ち負ける。 避けようとしたが、左手のバスターが巻き込まれた。 「くっ・・・」 バスターが破壊された。 「よしっ!」 ロックはガトリングレーザーを「ガトリングモード」にし、またトリガーを引く。 ジークの身体を、連続的に衝撃が襲う。 だが、それでもひるまずに、インフィニティ・ブレードを構えた。 「インフィニティ・ブレード、スピア!」 とたんに刀が、強烈な光を放った。瞬きするほどの時間だけ。 次の瞬間、刀は槍の形を取っていた。 ジークがロックへと槍を突きだした 「でぇい!!」 部屋の隅にいるロックにはかわせない。 体をひねって直撃は免れたが・・・ ――ドシュ!!―― 無数の刃が現れ、ロックにダメージを与える。 ロックはその場に膝をついた・・・ ロックは満身創痍だった。 ジークは冷静さを欠いている。 ジークはスピアを捨て、ロックに右手をかざした。 前に戦ったときも、こんな展開だった・・・もっとも、前は逆の立場だった。 ジークの手を赤紫色の光が包む。 ロックマン・トリッガーを封印するため・・・ 「イレギュラー、・・ロックマン・トリッガーを・・・」 (・・・封印する・・・) その言葉の途中で、ロックがジークに話しかけた。 「僕には・・君の記憶はないけど・・君なら・・・・」 ジークは反応しない。 「君なら、わかってくれそうな気がする・・・ 僕たちがこんな事をしなくても・・戦いを終わらせるにはもっと良いやり方があるって・・!」 ジークはわずかに目を細めた。 (そうさ・・・ 俺は失いたくないんだ・・・主も・・友も・・・ だが今は・・・・) ジークは右手に力を入れる、 「イレギュラー、ロックマン・トリッガーを・・封印する・・・」 が、ジークの背中に何かが飛び込んできた。 その瞬間、白い部屋が消え、元の通路に戻った。全ての傷はそのままで。 ジークの、背の部分から声が聞こえる。 「トリッガー様、遅れてすいません! 早くライブラリにっ!」 「ガガさん?」 「くっ・・・ ガガ、はなせぇぇ・・・!」 「ここは頼みます!」 ロックはライブラリへと足を踏み出した。 ロックとセラの戦いは、予想以上に激しいものだった。 ロックとセラの戦闘能力ではセラが大きく勝っている。 だが、ロックの傷には、特に深いものが無かったこと、 ロックは「生き残る」ために戦っているのに対し、 セラは「迷いながらも」戦っているということが、戦いに大きく影響していた。 そしてその戦いも終局を迎えようとしていた・・・ それは、「闇」と言うよりも、「黒い光」と言う感じだった。 重力場。 ブラックホールである。 足を止められたロックは覚悟を決めた。 双方が自らの最強の武装のチャージを始める。 「これで、終わりだ・・・」 セラが空虚な、しかし力強い様な声を出した。 二本の光が放たれる─── そのまま行けば、その莫大なエネルギーによって大爆発が起こるだろう・・・ しかし、その間に、ジークが割り込んできた・・・ かれは轟音の中、叫んでいた。 「無駄な戦いはやめろ! これ以上マスターを悲しませるつもりか!!」 ジークは無事だった。 とは言っても、数日間は動けないような状態だった。 しかしこの程度で済んだのは、 ジークがロックとの戦いでは使用しなかった「バリアフィールド」を張っていたからである。 これをロックとの戦闘で使っていれば、 ガトリングレーザーのパワードモード以外の攻撃ならほとんど防げたはずだ。 それを使用しなかったのは、いくらジークでも、気まぐれとは考えにくい。 これは、本人にしかわかりはしないだろう。 もう一つの理由は、ロックとセラの二人が、自らの武器の発射を途中で止めたことである。 セラのレーザーは体の一部となっているため、比較的難しくはない。 しかしロックのガトリングレーザーは、急造であるため不安定で、無理矢理止めようとすれば暴発する。 ロックはそれをやったため、ガトリングレーザーが修復不可能なほどに分解し、 ロックの右半身も大ダメージを受けた。 しかしロックは、自分よりもジークの心配を先にしていた・・・ このことからもロックは、ジークの記憶が無くとも心の隅では、 ジークが友人だと言うことがわかっていたのではないかと思われる。 まぁこれも、ロックは基本的に相手が誰だろうとも心配する性格なので、正しいかどうかはわからない。 ジークが現れる十数秒前の会話。 「くぅ・・・ 死なせるものか・・・ 誰もしなせるものかぁぁ・・・」 「ジーク様?」 「だから離せ!ガガ !! 俺はあの二人を止める! 死なせたくはないんだ!!」 その言葉を聞いて、ガガはジークの身体から抜け出した。 ジークは拍子抜けした声で、 「どうした?」 「誰も死なずに済むのなら・・・行って下さい!」 「ほう・・・ 素直じゃねぇか・・・ じゃなっ」 ジークは、ワープを開始した・・・ ガガに入り込まれたジークがあの戦場に行けたのには、こんな背景があった。 ロール・キャスケットとトロン・ボーン、数名のコブンが、 完成したロケットに搭乗して迎えに来るまでに、三ヶ月あまりかかった・・・ ここからは、皆のその後を伝えることにする。 ロックマン・トリッガー――――彼は今、ロック・ヴォルナットとして、以前の様な生活をしている。 しかしそもそもの目的であったロールの両親探しは、母親と父親がバラバラになっており、 手がかりであった「大いなる遺産」も手がかりとしての意味が薄れてしまったため、難しいかもしれない・・・ ロール・キャスケット―――――彼女もまた、以前の様な生活をすることだろう。 やっと巡り会った母親とは、しばらくの間喜び合うことができたが、 マチルダは数日後、「時間を失っていた分、やりたいことがある」と、夫を捜す旅に出た。 彼女は、娘のロールにこう告げてた。 「ロール・・・ 人というのは、やりたいことをやるようにできているの・・・ たとえその結果がどうなっても。 だから私は、あの人を見つけたときに、何かの形で絶望を感じるかもしれないけど、そ れが自分のやったことの結果なら、 可能な限り、受け止めるつもり。 またしばらく会えなくなるのは寂しいけど、あなたも自分のやりたいことをやっておく のよ・・・ まだ若いんだし!」 こうしてロールはまた、ロックのサポートを続けることになった・・・ ボーン一家――――――――――空賊を続けていると思われる。詳細は不明。 マザー・セラ、マザー・ユーナ―ヘブンに残り、事後処理を続けている。 二人とも元の端末に戻れた様子。 セラには「感情」が戻ってきている。 ロックマン・ジーク――――――しばらくはヘブンでマザーを手伝っていたが、 途中で飽き、今は地球で気ままに生活をしていると思われる。 把握不可能。 彼らの中には、大きな物を失った人物もいる。 しかし彼らは皆、未来へと向かって進むことができるのだ・・・ その向こうに何があろうとも・・・
https://w.atwiki.jp/mamono_kurasu/pages/52.html
ここは小ネタを募集する掲示板です 小ネタ案 束お姉ちゃん謹製のHP無限なゴーレムに、 耐久テストでパーティー全員で1ターン攻撃みたいなイベント発生 1さんの予想以上のダメージたたき出せたら特典ありで 複数回に分けて入るレベルの大規模ダンジョンの登場希望 「○○な××のダンジョン」みたいにダンジョン名は安価で決定して、終点には確定で大ボスありで アスラン+タバサの苦労人奮闘気 ルリの電子の妖精が電子の神に進化! 01分解・還元能力(マスラヲのウィル子)を習得 リリなのの吸血鬼 = 夜の一族 = 発情期になるジーク 周りの人の日常 「実はゾンビ師匠は新人教育が好きなだけのA上位ランクだった」みたいな小ネタ ジークが回復魔法を拳に纏わせて閃華裂光拳(ダイ大)を習得 魔物の皆様からやる夫へどうしても言いたい一言を 出会った時から結婚までのジークのやる夫に対する心象の変化 一騎打ち、やる夫VSかつみん 失った誇りを取り戻せるか! やる夫とジークの日常、糖度100%編 やる夫に魔物になる前の生活を語るジーク
https://w.atwiki.jp/gods/pages/111942.html
ジークムント(4) オーストリア大公の一。 関連: フリードリヒヨンセイ(2) (フリードリヒ4世、父) アンナフォンブラウンシュヴァイク (アンナ・フォン・ブラウンシュヴァイク、母) エレノアオブスコットランド (エレノア・オブ・スコットランド、妻) ヴォルフガング(18) (息子) カタリーナフォンザクセン (カタリーナ・フォン・ザクセン、妻) 別名: ジギスムント(4)
https://w.atwiki.jp/koboh/pages/102.html
一方のリュナン軍はノルゼリアを離脱した直後、リーヴェ王都に向かわずに真っ直ぐリーヴェ郊外のリムネーの村へと向かった。あの大乱戦後のために軍勢の体を為していないので、立て直しの意味も込められている。ナロン、サーシャ隊の到着を皮切りに、リュナン本隊が、リーヴェ王都の戦いから加わっているヴェーヌ隊に守られながらリムネーに入った。それからはノルゼリアでばらばらとなった部隊をまとめていた将たちが次々と到着して、徐々にリュナン軍の数が整い始めている。ノルゼリアからさほど離れていないこともあって、軍勢の立て直しはわずか一日で完了した。 その夜、リュナンは将兵を集めて、今までの事情を整理して伝え、改めて邪神の祭壇へと向かうことを伝えた。そしてセーナと同様に軍勢を2つに分けるべく指示を与えようとしていた。 「これからは屋内の戦いになるから天馬騎士団、騎馬部隊はリムネーに待機すること。」 と、リュナンが言うと、すぐにサーシャが異を唱えた。彼女が言うにはノルゼリアの戦いでケイトが失踪したため、その捜索を自身の手で行いたいらしい。もちろんサーシャが来るというからには主従のウエルト天馬騎士団も愛馬から降りて主君に付いていくことになる。屋外の戦いであったからこそサーシャの強さである機動力が存分に発揮されていたが、これから始まる屋内の戦いはその機動力がなくなり下手をすれば足を引っ張る可能性すらある。オイゲンはそれを危惧してサーシャに自重を求めようとするが、それよりも早くリュナンが条件付きで了承したために話がまとまってしまった。ついでにその条件とは配下のウエルト天馬騎士団をサーシャのファルコンを含めた愛馬の世話をさせるためにほぼ全軍をリムネーに残すこと、そしてサーシャはリュナンと共に行動をすることであった。特に最初の条件は大事であった。というのも天馬騎士とその愛馬は強固な信頼関係で結ばれているために、ペガサスは主君である天馬騎士か、その身近な人の与える餌しか食べないという習性がある(これはドラゴンも同じ)。つまり天馬騎士団全軍が天馬を置いて、サーシャについていった場合は最悪の場合、天馬騎士団自体の壊滅につながる可能性があるのである。それをヴェーヌが進言したためにリュナンがこの条件を付けたのである。もちろんサーシャはその条件を快諾したのは言うまでもない。 次の日、リュナン軍本隊は主将ロファール、副将ナロンとしたリムネー駐留軍に後を託して水の神殿へと入っていった。予想したとおり、ガーゼルの暗黒魔道士団が展開していたが、ラゼリア領主館の奪取戦で屋内戦を経験しているだけあって進軍はいたって順調に進み、瞬く間に神殿の半分を制覇した。だがその快進撃はそこで頓挫してしまうことに。グエンカオスがドラゴンゾンビの一頭に聖竜のウロコを装備させていて、そのドラゴンゾンビにいいように押されていたのである。聖竜ほどでないにしろそれでも圧倒的な戦力を持つドラゴンゾンビはリュナン軍の先鋒を壊滅させ、いよいよ本隊に切り込んできた。誰もが危うし、と思った瞬間、光の矢がドラゴンゾンビの右翼を突き破った。思わぬ光景にリュナン軍の将兵ですら何が起こったのかわからなかったものの、そのすぐ直後にまたしても光の矢がドラゴンゾンビを襲い、今度は見事に胸を貫いた。地に倒れ伏したドラゴンゾンビをよく見れば、聖竜のウロコは見るも無残に破れている。この光の矢を放ったのは聖弓イチイバルをセーナから託されたラケルである。一発でドラゴンゾンビを仕留めるはずだったのだが、まだ使い慣れてなかったために右翼の的中に留まってしまったのだ。しかしその光の矢を放った当のラケルですら、その威力に目を見張ったのは言うまでもない。 ドラゴンゾンビのために壊滅した先鋒の立て直しを後回しにして、リュナン軍本隊はすぐさま祭壇の制圧に乗り出した。ここもガーゼルの妖術師ネブカに翻弄されたが、リュナン軍随一の剣豪パピヨンとヴェガの剣の錆びとなった。ネブカの死をきっかけに大勢は決した。残った暗黒魔道士たちは先を打って水の迷宮へと逃走を始めた。リュナンはすぐの追撃はせずに、ホームズ軍から急遽駆けつけてきたサリアのクラリスの助言を受け、エンテから託されたリングオブリーヴェを使って聖剣リーヴェを蘇らせて、そしてさきほど壊滅したリュナン軍先鋒の立て直しを図った。 そしてリュナン軍は光の届かない迷宮へと足を踏み入れることに。視野のあまりの狭さに、リュナン軍は各所で分断されていきなり三手に別れてしまうが、そこはリュナンによって満遍なく鍛えられた軍勢である。リュナン軍と同じように迎撃のために三手に分かれての攻撃のために薄くなったガーゼル軍の攻撃を跳ね返したリュナン軍は次々とガーゼル軍の小隊を撃破していった。そしてその途中、リュナンとサーシャは無事にケイトを見つけ出して保護したのだ。己の不覚から主君サーシャに無断で行動を起こした上で、それでいてサーシャを危地に招いてしまったのだからケイトはとにかく惨めに感じたのだろう。しかしリュナンとサーシャの優しい言葉に己を立て直し、改めてサーシャと共にリュナン軍として奮闘することになった。 ついでにケイトの一時の離反は以前リュナン軍の猛将として働いていたジークと深い関係があった。とにかく寡黙だったジークだが、ケイトにはなぜかその過去を語っていたという。それにケイトは徐々に心を開いていって、しかも惹かれていったのかもしれない。サリアの隠れ里でジークが離反することになり、それがきっかけでケイトはさらにジークへの思いを深くなっていった。そしてノルゼリアの戦いの時、ケイトはジークの姿を見止めてしまい今までの衝動から勝手に軍を離れてジークを追跡した。彼に追いついたものの、そのジークから自分に接近してきた本当の狙いを知り、そしてガーゼル軍に捕らえれてしまうことになったのである。 戦いながらサーシャとケイトからその事情を知ったリュナンはいつになく怒りを心の中に秘めつつあった。そしてそれは別れていた部隊が合流していき、まとまっていく軍勢と比例するように徐々に大きくなっていた。暗黒魔道士を斬り、ゾーネンブルメらを蹴散らしていったリュナンの目の前にその怒りの対象、ジークが現れた。ジークはリュナンの姿を認めるや否やすぐに突撃し、リュナンの懐に入り彼を討ち果たそうとした。しかし怒りに燃えるリュナンはその心の内とは対照的に冷静に聖剣リーヴェを横に凪いで、見事にジークのデビルスピアを弾き飛ばした。ならばとジャベリンを構えてリュナンに放り投げるも、彼は冷静に最小限の動きでかわした。ジークはひたすら焦った。まさか初めて会った時に助けた相手が、今、目の前で自分よりも対等以上の戦いをしているのである。それだけリュナンはこの大戦を通じて、大きく成長していたのだ。一世代前の英雄グラムドの血が今まさしく覚醒しているリュナンの前にジークは圧倒されているのは確かである。次第に攻勢に出ていくリュナンの前にジークは己の身を守るのが精一杯になってきた。手にしているジャベリンも聖剣リーヴェによってボロボロになり、まさしくジークの命は尽きようとしていた。その時、リュナンはジークから離れた。あと一撃で決まる、はずなのに、リュナンはその瞬間を捨てた。しかしその目はまだ戦う時の目をしていた。そしてリュナンが口を開いた。 「ジーク、君は人の心をもてあそび過ぎた。君はその報いをこれから受けてもらおう。」 それは世間一般で言われている人の良いリュナンの言葉とは到底思えなかった。そこには悪しき者を厳しく対処したと言われているカーリュオンの姿があった。リュナンは聖剣リーヴェを上段に構え、そして言い放った。 『ラゼリア流剣技 最後の1つ 奥義ブレイヴスマッシュ!!』 すると聖剣リーヴェが白い光を発した。リュナンはその光を確認すると、すぐにジークに向けて振り下ろした。と、さきほどから剣にまとっている光がジークを襲ってきて、ジークはその光によって壁に激しく打ち付けられた。そしてその直後に見えたのは高く跳躍してジークに斬りかかろうとしているリュナンの姿だった・・・。 敵対したとはいえ、バルド要塞の戦いなどで輝かしい戦功を挙げたジークである。リュナンは部下にそんな彼の遺体を丁重に葬るように命じた。そしてその目を邪神の祭壇の方へと向けた。するとそこには目を覆い難い光景が広がっていたのであった。 「エンテ!!」
https://w.atwiki.jp/anipicbook/pages/2930.html
ジーククローネ スターターデッキ 「進撃の巨人」 ジーククローネ スターターデッキ 「進撃の巨人」 発売日 :2013年9月26日 発売 商品情報 ・カード50枚入り構築済みデッキ (デッキ内容は固定) ・クイックマニュアル ・デッキ解説書 ・プレイブック ・プレイマット ・スターターデッキ限定カード20種収録 ジーククローネ ブースターパック 「進撃の巨人」 BOX ジーククローネ ブースターパック 「進撃の巨人」 BOX 発売日 :2013年11月14日 発売 商品情報 ・1BOX=20パック入り ※1BOXですべて揃うとは限りません ・1パック=カード7枚 ・全108種 (パラレル11種含む) よりランダムに封入
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/1732.html
(投稿者:怨是) 「去年より、盛り上がってる……」 ――1945年4月20日、午後1時。ジークフリートは西地区5番街道沿いの政治喫茶の二階にあるスタッフルームから、眼下の喧騒を眺めていた。 ジークフリートの五年目の誕生日であり、連日開催されている催し事の本番である。祭りはこの日を以ってクライマックスを迎え、帝都ニーベルンゲは歓喜の声で埋め尽くされているようだ。 自分がこの場所に居る事は、大衆には知らされていない。極秘裏に運搬され、裏口からこの部屋へと連れられて来た。タイムスケジュールによれば、数十分後にこの近くでサプライズを提供するらしいのだ。政治喫茶に居る客の一人一人に挨拶をし、握手を交わす。それがこの日の最初の仕事だ。 直ぐ横で、国旗を模した色調のドレスに身を包んだMAIDが目隠しを丁寧に畳んでいる。半年ほど前に皇室親衛隊へ加わったMAIDだ。名をアドレーゼと云う。この政治喫茶を設立したヨハネス・フォン・ハーネルシュタインの保有する、直属のMAIDらしいが、ジークフリートにとってはそれ以上の事を知らないし、興味も湧かなかった。 そのアドレーゼが視線に気付いたのか、温和な笑みに僅かながら眉尻を下げて視線を向ける。 「申し訳ございません、ジークフリート様。この光景をお見せしたくて、ついこのような手荒な手段を」 「……別に、構わない」 ジークは冷たく返答し、再び視線を窓へと戻す。正直な所、ジークはこのアドレーゼというMAIDが苦手だ。今まで接してきたおべんちゃら使いの中でもとびきり頑固であるし、時折視界に入る瞳からは意志というものが丸々欠落してしまっているかのように、輝きが鈍い。 外の人混みを見続けるのにも嫌気が差し、ちらりとアドレーゼを一瞥する。彼女は微笑みつつも少しだけ首を傾げ、こちらの意向を伺った。 ――まるで人形だ。 動きは普通の人間やMAIDと変わらない。むしろ種々の所作は極めて丁寧で、人間であったならホテルの従業員や銀行員が似合っていたであろう程に優美さを感じさせた。しかし、双眸を覗き込んでも何も見えて来ないのだ。果たしてそれはアドレーゼの精神が虚無であり、忠誠心のみで埋め尽くされているのか。それとも意志を悟らせぬよう隠し通しているのか。或いは、混沌が渦巻いているのか。 いずれにせよ親しみの持てる類の感情が全く読み取れず、彼女が常に浮かべている微笑は実に薄ら寒く感じる。 ジークはそれにも辟易して、とうとう目を瞑ってソファへと乱雑に座り込み、天井へと顔を向ける事にした。 「御気分が優れないのですね。お水をお持ち致しましょう」 誰のせいで気分が悪い思っている。と、思わず激昂しそうになるのを寸での所で飲み込み、ジークは緩慢に被りを振った。ザハーラ遠征以来、どうにも気が短くなってしまっている。呼吸を整え、ジークはもう一度、アドレーゼに拒否の視線を送る。 「短時間とはいえ、悪路を車で移動しましたものね。では、医療班の者をお呼び致しましょうか?」 「いや、いい……」 雑踏と生気を感じさせないアドレーゼを交互に見続けたせいで調子が悪くなったとは、とても云えない。 幾ら彼女が気味の悪い性質の持ち主だったとしても、そのような事を云えばきっと彼女は深く傷付く。こちらに対し崇拝に近い感情を抱いているとはいえ、殆ど親交を深めていない相手に「お前のせいだ」などと云われようものなら、二度と立ち直れないかもしれない。持って生まれた気質を指摘された所で、それを是正する労力や時間が途方も無いものであるという事は、誰よりジークがよく理解していた。 だからジークは、天井を向いて別の事を考える様に努めた。 「ええぃ、どうしてわたくしばかりこんな目に」 同時刻、メディシスは皇室親衛隊営舎の仮設倉庫内に居た。ラジオは相変わらず“聖誕祭”の様子を中継している。 当日になってもまだ、プレゼントの仕分けが終わらない。その段取りの悪さにメディシスは奥歯から火花を散らせんばかりの勢いで歯噛みした。この誕生日プレゼントの受け渡しに際して政府は、国民に対し包装は事前に行わない様に指示した。何故ならこの仕分け作業で一度開封し、中身が危険物でないかを確かめた上で何処の誰が何日に届けたもので何番目にここに届いたかを逐一分別せねばならないのだ。 日に数万も届くそれらを、一日中仕分けする。しかもあのジークフリートの。そんな作業が三日も続けば気が滅入るというものだ。 今までは、誕生日プレゼントは一部の政財界人からしか送られて来なかった。が、今年になって一般人からも贈呈出来るようになったのは、ひとえに皇帝の「たったこれだけでは寂しかろう」という一言によるものである。余計な事を云ってくれたものだ。お陰で領事館を留守にしてまでこんな作業に従事せねばならなくなった。 どうやら国民的英雄と目されているらしいジークフリートに、相応しいと云えば相応しい数だ。今年になるまで贈りたくてもそれができなかった国民達が漸く悲願を達成できたのだろうか、若しくはここでプレゼントを贈らねば非国民扱いになるという恐れでも抱いているのか、帝都の外の他の街からもどんどん送られて来る。そのおかげでスタッフは数千人居るものの、一向に未処理のプレゼントが減る気配が無かった。 中には金貨が一枚だけだったり、腐ったケーキ――生もの禁止の通達をご存じなかったのか!――まで存在する。他にも木を掘って作った手作り勲章など、貧乏な家庭の子供が一生懸命にこしらえたであろう涙ぐましいプレゼントもあった。 「とんでもない数ですよね」 作業員の一人がメディシスに語り掛ける。冴えない男だと、メディシスは冷ややかな横目で評した。痩せぎすのその作業員は、作業の手だけは止めずに、虫眼鏡でプレゼントの中身を見ている。とりあえずその熱心さに僅かばかり感服しながら、メディシスは彼の言葉に応じた。 「国民の皆様の大半から贈られていますもの。数が増えるのも道理ですわ」 「それだけジークフリートが愛されてるって事ですね」 「そのようで。貴方はどう思われますの?」 メディシスは溜め息混じりに、作業員に訊ねた。何となく、彼の言葉が他人事に聞こえたからだ。 少なくとも、メディシスは愛していない。看板だけの英雄などに興味も無いし、このような馬鹿げた数のプレゼントを一つ一つ捌いて行くのも、あくまで安全を確認して国民があのMAIDに寄せる好意を無碍にしない様にしてやる為であって、自分は決してジークへの尊敬の念は向けていない。 作業員はプレゼントから眼を離し、やや焦り気味に答える。 「もちろん、ちゃんと尊敬していますよ」 「そう。わたくしはあの女のどこが良いのか解りかねますわ。容姿も、頭脳も、あらゆる仕事も、わたくしの方が絶対に優れていますもの」 これに関しては、絶対の確信があった。百歩譲って性格の悪さは認めよう。二面性のある言動のせいで裏表のある人物像として目されている事も、重々承知している。それに目の前の男は作業員とはいえ、ここは公衆の面前ではない。メディシスは開き直って、小声で彼に問う。 「ねぇ? 作業員さん。わたくしこそ愛されるべきではありませんこと?」 「あぁ申し訳ない、僕はその、妻がおりますので」 誤解された。そう云う意味ではない。メディシスは別に恋愛に対して興味は無く、ジークフリートのように――否、もっと健全な形での羨望の眼差しを求めていたのだ。が、そこはメディシスとて抜かりは無い。男女関係に真面目一辺倒であろう彼の性格に合わせた返しは既に思いついている。 「あら、ごめんあそばせ。ご結婚してらっしゃるなら、そう云って下されば。指輪はお付けになられないのかしら」 「仕事の時は外してるんですよ。ほら、指先使う仕事だと指輪に傷が付いちゃいますし」 「大切にしてらっしゃいますのね」 「結婚は、人生に一度きりですからね。……それで、なんで嫌いなんですか? ジークフリート」 急に話を戻され、メディシスの鼓動が跳ね上がった。例えるなら、静電気に触れてしまった時のような気分だ。メディシスも作業員の先程の様子に負けず劣らず、焦燥した心持で応じてしまう。 「あぁ見えて、湿っぽい輩でしてよ。ウジウジしてて。誰にも頼ろうとしなくて、一人で抱え込んで、いつも誰に対しても遠慮して。そのくせ、眼差しだけは助けを求めてる……どう見ても英雄の器ではありませんわ」 「仲良しなんですね」 「どうしてそんな結論に」 「よほど長い時間接していないと、そこまで見えて来ないものですよ。だからこそ、僕らのような“外側の人間”というのは、外側からの認識しかできない。そう、勇猛で、従順で、寡黙な英雄としか見れないんです」 口が滑ったか、と消沈するメディシスをよそに、作業員は真剣な眼差しで語り始めた。いつの間にか、彼は作業の手を止めている。膨大な数のプレゼントに隠れている為か、監視員がこちらを見咎める事も無い。それを好機と捉えたらしい彼は、熱の篭った演説を止めようとはしなかった。メディシスもまた、久方ぶりに親しみを込めて話しかけてくれる存在を見て、悪い心地がしなかった。 「――まぁその更に外側の人々は、逆にそれを疑問視すると思いますがね。例えばベーエルデー連邦の方々はジークフリートより、ルフトヴァッフェの赤の部隊を統べるシーアのほうが良いとするでしょうし。ここまでは、解りますね」 「えぇ」 「つまるところ、中途半端に関わってしまっている人達が一番身内の本質を見抜けないんです。その点、貴女は素晴らしい観察眼をお持ちの様だし、それで尚且つジークフリートを尊敬できるなら貴女の友情は本物で――」 「――お待ちなさい。わたくしに、ジークと友人関係になれと?」 続けさせたのが間違いか。鳥肌の立つような単語につい身震いし、思わず作業員の話を遮った。 作業員は残念そうな苦笑を見せるだけで、会話を止められた事を責めようとはして来ない。 「おや、違いました? 相手が本当に嫌いなら、あんなに流暢に語ろうとはしない筈ですよ」 「いいえ。本当に嫌いですわ。あんな泣き虫、誰が好き好んで尊敬などしてやるものですか」 メディシスが頬を膨らませていじけたそぶりを見せると、いよいよ作業員がくつくつと噴き出しそうなのを堪え始めた。やい作業員風情め、今の私の何が可笑しいというのか。作業員は肩の震えを何とか押さえ込むと、涙の滲んだ目尻をハンカチで拭いながら口を開く。 「何も崇拝しろとまでは云ってませんよ。好きになれる部分を見つけるだけです。強制はしませんが、今のうちに考えたほうがいいかもしれませんよ。いくら貴女がMAIDだとはいえ、いつ死ぬか判らないご時勢ですし」 そう云うと、作業員は「じゃあ、僕はもうすぐ休憩ですので」と手を振って去って行った。 メディシスは呆気にとられて暫く手を止めてしまっていたが、ふと彼が去り際に残した言葉を思い返し、釈然としない胸中を誤魔化すようにして仕分け作業へと戻った。 ――同日午後1時半。ジークフリートが階下へ降りるや否や観衆が驚愕と共に沈黙してジークを迎え、程無くして軍人達の拍手に端を発して政治喫茶は歓声に包まれた。 どうやら本当に、誰もジークがここに居るとは知らなかったらしい。事前の打ち合わせに拠れば、帝都の各所に建てられた政治喫茶の中からアトランダムに抽選された一店舗に現れるという事で、サプライズを提供する。もちろん国民にはそれを開示せず、抽選は最後まで軍人達の中で行われた。政治喫茶の客のうち、軍服を着ている者らは状況の飲み込みが早かったのはその為だ。 彼らは口々に「お誕生日おめでとうございます!」や「この日を心よりお待ちしておりました!」と、ジークに祝辞を浴びせて来る。ジークもそれそのものに関しては黙って受け入れる他、遣りようが無かった。が、奥底から忍び込んでくるようなおぞましい感情――熱に浮かされた大衆が往々にして、英雄と呼ばれる者に対して抱くような――だけは拒否した。或いは彼らの半分でも、これまでに散って行った戦友達を偲んでくれるのなら、彼らの感情を全身で受け止めても良かった。しかし彼らが目を向けようとしている様子は微塵も感じられない。 狂気だ。長い歴史の中で、突如として人間を丸呑みしてしまう程に巨大な害虫が現れ、それを救うとされている存在に縋り付く過程で、彼らは冷静な判断力を何処かへ放り投げてしまったのだ。ジークは鉄面皮のまま握手を作業的に消化し、彼らの表情を見てその様に断じた。 店内の全員と握手し終わった所で、軍人の一人が場を取り仕切る。 「では、次のプログラムがございますので、店内の皆様は一旦ご着席ください。えぇ、名残惜しいのは私とて同じですとも! 守護女神、鉄壁のジークフリート様がこの場に現れ、滅多に接する機会が無いからこそ、もっと一緒に居たい! それは重々承知ですが、英雄と云うものは得てして多忙なのです。さぁ! 尊敬しているからこそ、ここはジークフリート様のご意思を尊重して差し上げねばなりません!」 白々しい。一様に手を振って見送ってくる彼らを一瞥しながら、政治喫茶を後にする。 外はロープで歩道と車道が区切られ、親衛隊の面々は観客がロープを超えない様に奮闘していた。既にパレードが始まっており、ジークは絢爛豪華な装飾の施された街宣車の一台に乗り込む。このまま目的地まで移動する手筈となっている。専用に用意されたこの街宣車には、愛用の大剣バルムンクが立て掛けられていた。 「……ラジオを」 ジークは傍らに立つ親衛隊に小さくそう呟くと、親衛隊はすぐに車の梯子を降り、ラジオを取り出して持って来た。この空間にジークは堪えかねている。どうせ空虚な栄光に座すくらいなら、ラジオで客観的にどう報じられているかを知ったほうがよほど身の為になると判断した。が、ラジオ越しにリポーターが燃え盛らんばかりの勢いで報道しているだけであり、結局のところジークの心は灰色のままだった。 ついに、あまりの人口密度にラジオが断続的にノイズを発するようになってしまった。 仕方が無いので街宣車の運転手らの会話を上から盗み聞きする事にする。MAIDの身体能力は単純な筋力だけではなく、視力、聴力なども人間に比べると段違いに優れている。故に、この轟音とも表現できる歓声の中であってもすぐ近くの話し声が聞こえるのである。 何やら彼らは、この後のプログラムやプレゼントの仕分けが漸く終わったなどといった内容の話をしているらしかった。 ……不意に、彼らの会話が止む。その後、狼狽した様子で会話が再会された。隣の親衛隊の男も通信を聞いているようで、仕事上のものとはまた違った形で顔を強張らせていた。運転席での彼らの声を聞くに、どうやらこの街へ大型の飛行物体が接近しているという。 「……こんな事をやってる場合じゃない」 ジークがバルムンクに手を伸ばした所で、隣の男が制止した。彼は声を殺して耳打ちする。 「どうか、御辛抱の程を……我々がいたずらに動けば国民が不安になります」 耳打ちを終えて彼が離れた辺りで、ラジオのみならず街頭のスピーカーまでもがノイズだらけになった。民衆は気付いていないが、報道陣の面々は突然の出来事に眼を丸くしている。飛来する物体の影響だろうか。 ――それは違った。電波がジャックされたのだ。しわがれた低い声が、大音量で流れる。 『ごきげんよう、人類諸君。 ワケあって名前は明かせないが、俺はGの一種だ。 プロトファスマと云えば解るか? 解らない奴は学校でよく勉強しな! 今回はとっておきのサプライズを用意した。 聞いて驚け。何とV2ロケットだ! もちろんジークフリート、お前宛だよ。 お前がそこにいる場所の誰よりも高いプレゼントだぜ。 嬉しいだろ? パーティは盛大にやってこそだ。 これから死ぬまで俺達のパーティに付き合ってもらう。いいな? ……あぁそうそう。愛しの皇帝陛下殿に伝えておいてくれ。 “真の栄光を持つ者は、それを軽蔑する者である(Gloriam qui spreverit, veram habebit)”ってな。 じゃあな、あばよ!』 街道は瞬く間に混乱の渦と化した。 先程まで笑顔でパレードを眺めていた国民達は「落ち着いて非難してください」と誘導する軍人達を無視し、皆思い思いの方向へと走り去ろうとする。ジークの隣に立つ親衛隊の男はその様子を見て、顔をしかめて立ち尽くすだけだった。 もう、他の親衛隊の面々は緊急発進しているのだろう。バルムンクの柄を握りながら、ジークは口を開く。 「……私も行く」 「V2ロケットは爆発物ですよ!」 「それでも行く」 「駄目です、死んでしまいます!」 肩を掴む手を振り払いながら、ジークフリートは親衛隊の男を肩越しに睨んだ。無意識ではなく、意識的に。それきり、親衛隊の男は何も云わなくなった。ジークは空へ向けて呟く。 「私のせいで飛んで来たなら、私が決着を付けないでどうするんだ」
https://w.atwiki.jp/ankokarenlove/pages/35.html
キャラクター一覧 「」内は散り際の台詞 カリスマ クラス:ロード→マスターロード 「正直…すまん…か…った…」 ラパネシア クラス:僧侶→司祭 「てめえら…後は任せた…ぜ」 キジトラ クラス:ドゥクス 「くぁwせdrftgyふじこlp;@」 ランゼル クラス:魔術師→賢者 「…我は戦士ランゼル。この我が…」 クルト クラス:シャーマン→ドルイド 「イクト…そろそろアレ…返せ…よ…」 支援相手:イクト、ハイテク、ウィース イクト クラス:アーマーナイト→ジェネラル 「ごめんよクルト…アレ…なくしちゃった…」 支援相手:クルト、ジーク、ウィース ジーク クラス:傭兵→勇者 「てめえら…俺の事を永劫語り続けろよ…」 支援相手:イクト、ハイテク、ウィース ハイテク クラス:盗賊 「病の後は…死しかないのだな…」 支援相手:クルト、ジーク、ジェイド ウィース クラス:ドラゴンマスター 「ラララララ~♪ラララ…」 支援相手:クルト、イクト、ジーク ジェイド クラス:盗賊 「俺…m9(^д^)プギャー」 シン クラス:僧侶→司祭 「…フラアァァァァン」 アンコ クラス:ファルコンナイト 「ウワアアアア…」 リーマス クラス:剣士→ソードマスター 「てめえら…今までありがとな…」 ロッシー クラス:ドラゴンナイト→ドラゴンマスター 「おい…死ね…」 アルトリア クラス:パラディン 「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」 ヴァカネコ クラス:アーチャー→スナイパー 「もう…知らんわ…」 ネス クラス:ソシアルナイト→パラディン 「漢検…行って来るね…」 カイト クラス:ソシアルナイト→パラディン 「貴方を…足の間から…」 ニック クラス:マムクート 「………」 ラギアン クラス:ソルジャー 「全てよ…消し飛べ…」 レイ クラス:アーマーナイト→ジェネラル 「ウォーーーーMAXSーーーーー…ウッ。」 レモンキー クラス:戦士→ウォーリア 「ウッキッキイィィィィィ…」 クルル クラス:バード 「ゼトア様…お許しください…」 スコール クラス:踊り子 「…直に天の怒りが下るだろうに…」 ユフィー クラス:トルバドール→ヴァルキュリア 「そんな…どうして…?」 イナフ クラス:傭兵→勇者 「もう引退か…我が身と…共に…」 ギル:海賊→バーサーカー 「エイト…ラパオ…」 エイト:山賊→バーサーカー 「ギル…チッ…」 ラパオ:魔道師→賢者 「ラパネシア…くそっ」
https://w.atwiki.jp/6war/pages/31.html
概要 六界の一つ、六界の中では最も低い文明レベルで、他世界における「旧世代」の水準近く、中でも機械文明はほぼ未発達であったが、六界戦争の終盤、南方六界連合軍として合流したレイトンの軍勢は、ザールックのダルスバードを持ち帰る。当初はその技術を流用することは不可能であり、長きにわたって歴史上の展示品扱いされていたが、後に本格的な研究班が徹底的に解析し、7400年頃から急激に技術水準が発達していく。 こうして、ザールックですら限定的にしか作れなかった月光をエネルギーに転換する半永久充電システムクレイドエネルギーを完成させるが、いきすぎた兵器開発から世界を荒廃させる大戦争を起こす。 大陸バルファリア大陸 トークス大陸 ビバスク大陸 人口推定2億人(六界戦争終結時) 歴史 115年 妖狩の巫女と朱竜族の戦いがこの頃最も激化する。 3445年 プレスロード国建国。 3847年 ティヤマ国建国。 4535年 ナルミア国建国。 4885年 ジークライ国建国。 5687年 パラスティア国建国。 6215年 ラスブロスの腹心が転移ゲートを使い始めてレイトンに降り立つ。この年をレイトンにおける六界戦争開戦年とする。 7218年 六界戦争終結。 7400年頃 急激に技術が発達していく。 8560年 この頃から科学文明の進化がはじまる。 8573年 軍需企業マクセス社設立。 8591年 軍需企業オルトリンデ社設立。 8850年頃 科学文明が法術文明を越え、世界は科学が覇権を握る。ただしその動力は法術が補うため、衰退はしていない。 9150年頃 他の六界では見られないビル街が作ら、独自の文化が生まれる。 9200年頃 太陽光を利用することで、半永久的に使用できる充電型動力クレイドエネルギーが完成、これにより、法術も急速に衰退していく。 9400年頃 各国の緊張が高まり、以後世界大戦と休戦を交互に行い、世界の勢力図が頻繁に塗り替えられる。 9538年 世界を荒廃させる戦争「第四次世界大戦」が勃発。ビバスク大陸では、周辺諸国に圧力をかけていたパラスティア国に対して、ジークライ国、プレスロード国、ティヤマ国、ナルミア国が連合国として対抗する、ただし四か国の連携はほぼ存在せず、それぞれの国が独自に動いた。 9539年 ブルクアの戦いで連合国(ナルミア国)軍に勝利したパラスティア国が、大陸東北部を完全制圧。 9541年 後にスレイヴギアウィルス事件を起こすこととなる男、パラスティア国に技術士として潜り込む。(本人がすべてのデータを消去しているため詳細は不明) 9544年 あらゆる陣営に武器を売っていたマクセス社、オルトリンデ社だが、戦争の長期化を狙って連合軍側に優先的に優れた兵器を販売、その結果パラスティア国が歴史的大敗により連合国軍が一気に勢いづく。 9546年 パラスティア国が水面下で開発していたスレイヴギアが完成。 9547年 スレイヴギアが実戦投入、膠着していた戦局は一気にパラスティア国有利になる。 9549年 レインダースの戦いで、大量のスレイヴギアを投入したパラスティア国が、連合国(プレスロード国)軍に大勝利、以後連合国側は一方的な防戦となる。 9551年 戦局を押し戻すべく、マクセス社は完成させたヌートリアを連合国側に配布、局地戦においては効果を発揮するが戦局は覆らない。 9552年 11月、コレイスレートの戦いで、パラスティア国が連合国(ナルミア国)軍に大勝利戦をおさめる。 9553年 レックスの戦いでパラスティア国が、連合国(ナルミア)国の反撃を受けるが最終的に撃退する。 9554年 7月、士気高揚のため、各部隊のエースを集めた「ホワイトフォックス隊計画」が構想される。 9554年 10月、ルゲリアの戦い、パラスティア国が艦隊戦により連合国(ジークライ、プレスロード国)軍を相手に大勝利をおさめる。 9554年 12月、アーリアの戦い、パラスティア国が、連合国(ティヤマ国)軍に勝利。 9555年 2月、ウィルスを流し込まれたスレイヴギアの反乱、(スレイヴギアウィルス事件)が勃発する。 9555年 3月、結成直後のホワイトフォックス隊、自分たちの暴走を恐れたアザミの提案によりコールドスリープ開始。 9561年 10月、大陸にある大都市は、パラスティア、連合国関係なくほぼすべてが、暴走したスレイヴギアによって焼き尽くされた。 9664年 リアン、工場跡地で眠っていた対スレイヴギア用に作られていた各種の兵器を発見、以後各地の工場跡を集中的に巡りながら組織を拡大していき、クロスクリムゾンが結成される。 9683年 2月、ホワイトフォックス隊のコールドスリープ解除。 9683年 ホワイトフォックスとクロスクリムゾンによる旅路の遭遇戦が繰り広げられる。 9683年 12月、霧の箱舟作戦により、汚染スレイヴギアの主力部隊はほぼ壊滅する。 9688年 汚染スレイヴギアを無力化するウィルスにより、大陸に残るほぼすべての汚染機が機能を停止する。 9695年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していたパラスティア国が正式に復興宣言。 9703年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していたティヤマ国が正式に復興宣言。 9704年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していたジークライ国が正式に復興宣言。 9708年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していたナルミア国が正式に復興宣言。 9725年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していたプレスロード国が正式に復興宣言。 9753年 スレイヴギアウィルス事件で荒廃していた各国を自治区とすることで、パラスティア連邦が結成、ナルミア、ティヤマ、プレスロード、ジークライ国が加入。 主な国 真説妖狩巫女伝奇の時代 この時代はまだ国家として成立していない集落 妖狩の里 朱竜族 鬼守衆 Slave Gearの時代 パラスティア国 ジークライ国 プレスロード国 ティヤマ国 ナルミア国 この世界を舞台とした物語 真説妖狩巫女伝奇 Slave Gear
https://w.atwiki.jp/ls2014/pages/96.html
二人のホムンクルス◆z9JH9su20Q かつて少年には、願いがあった。 それはささやかな、しかし彼自身に言わせれば余りに大逸れた、たった一つの切なる望み。 元を正せば。少年はただ創造主のために必要とされるだけの魔力(いのち)を供給し、干枯らびれば廃棄するためだけに大量生産された、消耗品の一つに過ぎなかった。 故に、何かを成し遂げるにはまったくの無力。差し出せる財の貯蓄一つもなく、積み重ねた歴史すらない無価値な存在(じぶん)。 ただ奇跡的な確率の、何ら必然性のない偶然で自我が芽生えただけ。余りに儚い己には、願いを口にする権利などないと少年は認識していた。 しかし、それでも一人の英雄が、少年に願いを訊いたから。 願いの実現する確率がどれだけ絶望的なのかを認識したまま、それでも諦観することなく足掻いた末に、彼はその英雄と出会えたのだから。 たすけて、と。 生きたいという『願い(言葉)』を、少年はその時、確かに口にしてみせた。 ◆ ここは殺し合いの舞台となった、島の一角。 そこに、かつて願いを叶えた少年がいた。 細く優美な顔立ちは中性的で、肩まで届く灰色の髪が一層その印象を際立たせている。 紅玉を思わせる無機質な瞳には、それでも疑問の色が浮かんでいた。 「……俺は死んだ、と思っていたが」 精緻な造形美とは裏腹に、男性的な一人称を用いてホムンクルスの少年――恩人に肖り、自らをジークと名づけた彼は、現状への戸惑いを顕にしていた。 つい先程、ジークは敵対者との騙し合いに敗れ、この胸に銃撃を受けた。それは認めざるを得ない事実のはずだった。 だが事態は更に予想を覆し、気づいた時にはジークの肉体は全快して、謎の老人の眼前に突き出されていた。 状況把握もままならぬまま、ジークは自身がポーキー主催の殺し合いの参加者、その補充要員に選ばれたことを知らされ、こうして戦地へと放り込まれていた。 一瞬、寸前まで敵対していた黒のアサシンが展開した何らかの宝具の影響で幻覚を見ているのかとも思ったが、そんなことを可能とするような逸話はジャック・ザ・リッパーにはない。 余りにも急過ぎる展開ではあるが、これも現実として起こった事象なのだと受け入れるしかないとジークは結論を下す。 殺し合い。 ジーク自身の境遇、加えてこの島に飛ばされる前に見せられた開幕セレモニーとやらの様子から察するに、このバトルロワイアルは聖杯戦争とは根本的に異なる。 聖杯戦争の参加者は、ほとんどの場合において自ら聖杯を求め馳せ参じた者達で構成される。彼らは事前にどのような戦いであるかを理解した上で、それでも各々の願いのために身を投じるのだ。 だが、これは違う。まるで異質だと断じて良い。 これはただのポーキーの戯れであり、事情も知らぬ者達を掻き集め、その命を娯楽のために使い潰そうとしているのだ。 何しろ外部に助けを求めることはできないと、ポーキー自身が開幕のセレモニーで宣言していたのだから。 おそらくは島にいる全員が、巻き込まれた被害者であると見るべきだろう。 その一人として、ジークはどんな選択をするべきなのか? 「……因果線(ライン)が切れている」 全快したとはいっても、どうやら万全というわけではないらしいということを、ジークは悟る。 恩人の一人、ライダーのクラスで現界したシャルルマーニュ十二勇士のアストルフォ。現在はジーク自身がマスターとなり、現世に留まるための魔力供給を行っていた彼との繋がりが、ない。 討ち取られた、とは考えない。考えたくない、というのも正確だが、あの状況からライダーが脱落する可能性は低いだろう。おそらくはポーキーの仕業だろうと推測できる。 単独行動のスキルを持つライダーならば、因果線が切れたとしても再契約まで猶予はある。だからその身を心配してはいなかったが…… (また泣かせてしまうな) つい昨日の騒動を思い出して、ジークは何とも申し訳ない心地となる。 いや、泣かせるだけならまだ良い方か。 彼はジークのことを、己が全てとまで言ってくれたサーヴァントだ。もしも命を落としたなら、跡を追うのが当然とも言っていた。 これはライダーが思い詰めた真似をしてしまう前に、早急に彼らの元へ帰らなければならないだろう。 だが、だからと言って……と、ジークは自らに嵌められた首輪に触れる。 この場所には、これを付けられた者が他にも大勢いる。 未来の確定事項として死が運命づけられているのは、全ての生命において共通している――それはわかっている。 しかし。セレモニーでポーキーと言葉を交わしていた幼子までもがこうして自由を奪われ、確かにあったはずの未来への可能性に挑むことすらできないまま、こんな孤島で終わってしまうことが確定しているというのは――あまりに理不尽で、あまりに悲しい。 それは何を為す自由も与えられないまま、ただ消費されて死ぬことが確定していた、かつてのジーク自身の姿にも重なる。 彼ら全てを救うことは、限りなく困難だ。仮令脱出する手段があるとしても、他の者達も一緒にとなればポーキーに勘付かれてしまう可能性も高まる。 仕方ない、と一言で済ますことは簡単だ。その一言で、自分は簡単に余計な重荷を切り捨てられる。 それでも、ジークは仕方ないなどと言うつもりはない。それはジークが絶対に口にしてはならない言葉だ。 何もなかった自分の願いに応えてくれた、綺羅星のような英霊達と、主に背いてまで自分を見逃してくれた同胞(ホムンクルス)達の慈悲と助力のお陰で、ジークは今、こうして夢を叶え生きている。彼らの内、誰か一人でも「仕方ない」と割り切っていたら、ジークはただの石くれとなっていたのに。 助けを伸ばして差し出した手を、掴んで貰えたということ。それがどれほどの幸運であり、どれほど喜ばしいことであったのか、ジークは鮮明に記憶している。この胸に、確かにそれを刻んでいる。 かつて彼らに救われたように、今度は己が誰かを救いたい――それが最初の生きたいという願いを叶えた、ジークの次の夢だった。 既に、残してきてしまっていたホムンクルス達を、創造主の消耗品という立場から解放することには成功した。 しかし、それでジークは全て良しとはできない。それで後は知ったことかと、安穏と暮らしては行けない。故にその後は恩人達に報いるために戦っていたが、ここにはその対象がいない。 ならば、ここでは恩人に恥じない選択をしよう。 彼らは咎めないかもしれない。だが他の誰が赦そうと、ジーク自身が見過ごせない。 故に、どれだけ急いで戻らなければならないのだとしても――仮令それが、与えられる報酬はなく、報われることすらない行為だとしても。 ジークは決して、この島に閉じ込められた被害者達を見捨てない。 「すまない、ライダー。少し帰りが遅れそうだ」 きっと、自棄になることなど自分は望んでいないとライダーはわかってくれている、持ち堪えてくれていると信じながらも、ジークはここにはいない恩人へと謝罪を残す。 だが君なら、ルーラーなら、そしてセイバーならこうするだろうと、胸の内で続けながら。 少年は、新たな戦いの舞台へと歩き出した。 ◆ 願いを諦めた少年がいた。 彼は何世紀と生き、兄弟達の中でも最も父に近かった。 彼ら兄弟は、父の願いのために働いた。働き続けた。だって親子なのだから。 父の願いが彼の願い――途中、弟が一人背いてどこかに行っても、それは変わらなかった。 変わらなかった、はずだった。 彼には偽りの家族がいた。弟が父親役という、奇妙な家族ごっこだった。 母親役は、これがごっこ遊びだと言うことも知らない部外者だった。 知らなかった、からだろうか――彼女は少年のことを、実の息子のように可愛がってくれた。 ただのごっこ遊びのはずなのに、少年もそこに居心地の良さを覚えてはいた。 けれど、所詮は偽り。彼女もやがては本物の父の糧となる家畜の一匹に過ぎない。 好きだけれど、そうでしかない。仕方がないと、少年は割り切っていた。 けれど。 本当は―――――――――――――――― ◆ さて、どうしたものか。 始まりのホムンクルス、プライドはランタンを片手に夜の道を一人歩きながら、少しばかりの思案に耽っていた。 謎の襲撃者に襲われてから、再生するまでに時間を要したことは誤算だった。その時は気にかけなかったが、よくよく考えてみれば少しだけ面倒な事態となっている。 名簿に載っていないセリム・ブラッドレイの名を使うこと自体は、ポーキーが後から連れてくると言っていた五人の参加者の誰かだということにしてしまえば問題はない。万が一、次の放送で虚偽が露呈してしまったとしても――その頃には、プライドは本来の力を十分に揮うことができるようになっているのなら、致命的な不利とまではならないはずだ。 プライドを悩ませたのは、野原しんのすけの存在だ。 再生直後は気づかなかったが、探索してみると周辺に彼が殺されたと思しき形跡が一切なかった。襲撃者はかなり高い殺傷力を有していたために、幼児であるしんのすけが無事に逃げ果せるとは想定外だった。 あるいはポーキーが言っていた正義の味方気取りが乱入でもしたのかもしれないが、仮にそうであるならより困る。もしも通りがかった誰かが助けたというのなら、その際自分が回収されていないことから、その人物もセリムは死んでいたと認識したはずだ。 であれば、きっとしんのすけやその保護者は喧伝しているはずだ――セリム・ブラッドレイを殺した危険人物が近くにいるぞ、気をつけろと。 幼児であるしんのすけでは、仮に肉体的に優れた同行者が居たとしてもそう遠くへは移動できないはずだ。そうなると、プライド自身と遭遇する可能性の高い近隣の参加者達にもしも彼らが先に出会い、その情報を伝えていた場合――セリムは死んでいなければならない。 それでも外見的特徴なら、まだいくらでも誤魔化せるだろう。名前を告げても、しんのすけ達の情報が誤っていたと誘導できないとも限らない。 だがもしも、他の参加者と合流している本人達と遭遇してしまったら――さすがに言い逃れが効く状況ではないだろう。人間ではないと看破される事態はまだ、避けたい。 貴重な情報源を潰す事態は避けたいが、再び逃げられても厄介だ。再会してしまった時は、即座に始末できるよう“影”を使う心積もりをしておくべきだろうか。 ただ、あの奇襲に対処しきれる相手に対しては、夜の中という制限下では油断できないか。 全く面倒な事態だ。約束の日は近い。お父様のために、早く帰らなければ。 だがだからこそ、確実に帰還するには慎重を期さなければならないだろう。 ……家族ごっこの終わりも、もう近いというのに。 そんな取り留めもない思考が中断したのは、前方から届く、自身の物とは別の灯りに気がついたためだった。 先程の己の思考をなぞる。今プライドが出会う可能性が高い相手として、真っ先に野原しんのすけの名が想起される。 知らず、ランタンを握る手の位置が高くなり、眦が鋭さを増す。 「――何者だ」 「わぁああああああああああああああああああああああああああっ!?」 硬い誰何の声が投げられて来たと同時に、プライドは悲鳴を上げた。 「た、助けてください! 殺さないでください!」 手放したランタンが転がる音と共に、プライドは頭を抱えて縮こまる。 そのまま震え出すがその実、然程恐怖しているわけではない。しかし、まずはこう振舞うのが一番だろうと無力な子供を演じる。 この状況で、まずはこちらの素性を尋ねてきた相手だ。胆力は最低限ある以上、悲鳴を聞いて逃げ出しはしまい。 危険人物だとしても、無差別に襲いかかってくる相手ではない。また先程懸念した相手に該当するとしても、まずは状況を理解するために情報を引き出すには、これが良い。 ――ランタンで照らせる範囲が狭い以上、戦うにしても接近して貰ってからでなければ。 「嫌だ……僕、怖い……っ! お父さん、お母さん……っ!」 「……脅かして悪かった。落ち着いてくれ」 プライドの悲鳴を受けて、声の主は足早に駆けつけて来たようだ。穏やかな声で、無用な危険を呼び込みかねないプライドを諭そうとする。 「……怖い人じゃ、ないんですか?」 恐る恐るといった演技を保ったまま、プライドは顔の半分を振り返る。 「他人から見てどう映るのかは、俺自身には判断しかねる」 そこにいたのは、中性的な容貌をした一人の少年だ。下方からの光源に照らされた表情に乏しい顔には妙な影ができ、美しいがなるほど、見方によっては恐怖を覚える人間もいるかもしれない。 彼以外に、人の姿や気配はないらしい。そこまで見聞していた最中に、造り物めいた口を開いて少年は続ける。 「だが、無闇に誰かを傷つけたいとは思わないし、殺し合えと言われて従うつもりもない」 律儀が過ぎるのか、妙に回りくどい言い回しではあるが、一先ずは無害な相手のようだとプライドは安心した。 「あぁ、良かったぁ……」 その感情はそのまま本気で恐怖から逃れられた子供の姿を演出するのには流用できなかったが、大きく息を吐いて落ち着こうとする仕草を見せると、向こうから気遣って来た。 「大丈夫か?」 「は、はい……ご、ごめんなさい、ご心配をおかけしました」 「いや。こんな状況だ、君のような幼い子供なら恥じることはない」 私の方がずっと年上ですけどね、という言葉は呑み込んで。 ぎこちない笑顔の後に、プライドはセリム・ブラッドレイの名を使うことにした。 反応次第では少々骨が折れる事態になるかもしれないが、その場合にもしんのすけの情報を得ることができるかもしれないと考えたためだ。 結局のところ、少年はセリムの名に小さく反応したが、それは別の理由に因る物だった。 「どうやらセリムも俺と同じ、名簿には載っていない参加者のようだな」 勝手に納得した少年は、むしろ手間が省けると言った様子で、そのままジークと名乗った。 「立てるか、セリム?」 頷いたが、それでもジークの差し出した手をプライドは素直に借りることにした。あれだけ怯えていたセリムが、すぐ気丈になるのは不自然だろうという判断だ。 改めて立ち上がってみると、ジークは鋼の錬金術師よりも背が高かった。にも関わらず平気でランドセルを背負っているのは少々滑稽ではある。 佩剣しているが、その重みに振り回されていた様子はない。となると今初めて剣に触れたわけではなく、それなりに扱いには慣れているのかもしれない。 同行者としては悪くないか――と冷静に値踏みしていたプライドに対し、立ち上がったこちらの姿を見たジークはギョッとした表情を浮かべていた。 「……何があった?」 彼の視線を辿ると、ちょうどプライドの胸元――乱雑に食い千切られたかのように破れた服の穴があった。 そういえばこの服は、エンヴィー達のそれと異なり、プライドの体の一部ではなく義母であるブラッドレイ夫人に与えられた物だ。賢者の石による自動再生も、そこまではカバーしていなかった。 そう――すっかり忘れていたが、これはブラッドレイ夫人から貰った服だったのに。 知らず湧き上がった微かな苛立ちを抑えながら、プライドはセリムとしての仮面を被って、怯えた声でジークに応じる。 もちろん殺されたが生き返った、という事実は伏せて、ただ同行者であった野原しんのすけと歩いていたところを襲撃者に襲われて、彼とはぐれながらも命からがら逃げ延びて来たと説明した。 すると人形のように感情に乏しかった顔に、それでも明確な怒りを滲ませた後、深呼吸したジークはプライドの頭に手を置いた。 「よく頑張った。もう大丈夫だ」 今度は、穏やかな声音で。人形のようだと感じた相手だったが、意外にもそれなりに感情豊からしい。 ただ、それを表すために作れる表情の種類が、まだ少ないと見るべきか。 馴れ馴れしく置かれる掌をやや鬱陶しく感じながら、プライドはジークに答える。 「はい……でも、早く逃げないと」 「危険な芽は、早急に刈り取って置きたいが」 儚げな外見からはなかなか想像し難いほどに強気かつ好戦的な言葉をジークは吐くが、考え込むように逸していた視線をプライドに戻し、頷く。 「確かに、君を連れたまま向かうべきではないな」 ジークの選んだ方針を、少しだけ、惜しく感じたのは気のせいだろう。 それから二人は、プライドが襲われたのとは反対方向かつ、縁のあるアメストリス軍中央本部を目指すことにした。 ただ、ブラッドレイの名に反応がなかったことから予測できたように――やはりジークも、アメストリスという国に覚えがないらしい。故にプライドは、敢えてセリムがアメストリス大総統の息子である事実を今は伏せ、ただ中央部を目指すだけであるかのように振舞った。 「――君を襲った相手のことを、思い出すことはできるか?」 道中、ランタン片手にジークがそんなことを尋ねてきた。 プライドはセリムとして頷く。突然のことだったから、細かいことには自信がない――実際のところは、その間死んでいたから知覚していないのだが――と伝えると、そうか、とだけ答えた。 「心当たりがあるんですか?」 プライドの問いに、こちらを向いて少し間を置いた後、ジークは「いや、ない。忘れてくれ」ときっぱり否定するが、怪しい。 「では、どうしてそんな質問を?」 そんなプライドの問いかけの、どこにそんなに驚いたのか。一瞬だけ目を丸くし、真顔――おそらく、表情に感情を上手く反映できていないのだろう――になった後、ジークは小さく首を振る。 「仮に発見した時に、対応が遅れては拙いと思っただけだ」 はっきり言って嘘臭い。だがこれ以上突っかかるのは、平時ならともかくジークの前で見せたセリム・ブラッドレイにはそぐわない。 故に黙って、大人しくジークの少し後ろを歩いた。幸いこちらの歩幅を考慮してくれているので、ペースには余裕がある。 「セリム」 沈黙してから十秒を数えるといったところで、こちらを見もせず、しかし力強くジークが告げてきた。 「さっきの襲撃者のような手合いからは、俺が君を守る。だから心配しなくても構わない」 ボロを出さないようにと黙っていたのを、ジークは拒絶されたと考え落ち込んでいる、とでも思ったのだろう。 直球なのにどこか不器用な励ましに、プライドは苦笑しそうになった。 ジークが何か隠し事をしているのは明白だ。しかし、やはり鋼の錬金術達のように、ジークもまたポーキーが言うところの正義も味方気取りのようだ。 ポーキーは愚かだと断じたが、プライドはそうとばかりは思わない。大切なものを守るためなら自分の命すら厭わず、時に絶望的な状況すら覆す人間の信念というものを、自分達ホムンクルスにはない価値観として高く評価――あるいは好いてすらいる。 だがその一方で、やはりプライドは人間セリム・ブラッドレイではないのだ。仮令評価できるものであっても、プライドに共有できる価値観ではない以上、利用するということに何ら疑問は生じない。 だから、ジークという存在は好ましい。その在り方は嫌いではないし、何より秘密を隠していたところで扱い易いのだから。 「――ありがとうございます」 私の懐に、入ってきてくれて。 今はまだ、それに適しているとは言えないが……様子を見て追々、アメストリスを知らないという彼らの認識する世界の情報を引き出させて貰うとしよう。 自身を人間と相入れぬ化物と認識する始まりのホムンクルスは、好ましい人間だと認識した彼が――あるいは自分とは、対極のホムンクルスであることを知らないまま。 ただ、影の中でだけ笑っていた。 ◆ 足元を隠した暗闇を、ランタンの灯りで払いながら、ジークは小さく歩を進める。 気遣い歩幅を合わせてこそいるが、そろそろ一時間は夜道を歩いていることになる。大英雄から受け継いだ竜の心臓を持つジークには些かの苦もないが、セリムのような幼い子供――それも一度、命懸けの逃走劇を終えてそう時間が経っていないはずの疲弊した状態で、まだ弱音の一つも吐きはしない。 それは気を遣わせまいとする、小さき紳士の健気さ故か。それとも外見から伺えるほど、彼が脆弱な存在ではないためか。 ジークはセリム・ブラッドレイと名乗ったこの子供に、体に纏わりついて来るような警戒心を抱いていた。 そうなるに至った理由は、大きく分けて二つある。一つはつい先程、セリムを襲った襲撃者について尋ねた際のこと。 名簿にジークの心当たりのある名前は多くはなかったが、それでも無視できない名前はあった。 その一つが、仇敵たる黒のアサシン――ジャック・ザ・リッパー。 仇敵とは言っても、ジークは黒のアサシンのことを何一つ覚えていない。それは正体不明の殺人鬼という伝説が、アサシンに与えた能力――戦闘終了と同時に、こちらの得たアサシンに関する情報が全て抹消されるという、恐るべき作用によるもの。 辛うじて機械の目はその効果を掻い潜り、アサシンが存命した当時のロンドンを覆っていた“霧”を再現する宝具を持つことのみが明らかになっているが、それ以外は直接向かい合い、殺してやると互いに宣言した間柄のジークでさえ、顔も武器も、何もかもを忘れている。 だが、犠牲者までは忘れられなかった。 ただそこにいただけで、ホムンクルスが一人死んだ。名前も知らなければ言葉を交わしたこともない相手ではあった。しかし、やっと自由に生きる権利を手にしたばかりの同胞が、何の理由も必然性もなく、ただ巻き込まれて殺されたのだ。その事実が、どうしようもなくジークに黒々とした熱情を煮えたぎらせている。 そんな個人的事情を抜きにしても、相手は伝説の殺人鬼を再現した現象。その存在理由はただ一つ殺戮であり、このバトルロワイアルにおいても放置し続けるのは余りに危険。一刻も早い打倒が必要だ。 だから、もしもセリムを襲ったのが黒のアサシンであったなら、ジークは彼を安全な場所に置き次第、踵を返して討伐に向かうつもりであった。 しかし、セリムは襲撃者についての記憶の欠落がなかった。襲ったのはまた別の、危険な相手ということになる。 そこでジークとしては話が終わったのだが、セリムの好奇心を呼んでしまった。 だが彼は、おそらく聖杯戦争とは何の関わりもない子供である。神秘の秘匿は魔術の大原則であり、無用な危険に巻き込まないためにも一般と魔術師の世界は棲み分けされるべきだ。何よりそのために心を砕く、大切な恩人も一人いる。 彼女に余計な負担はかけたくない。そう考えたジークは暗示をかけて、セリムがこれ以上この話題に言及しないようにしようとしたのだが――それが効かなかったのだ。 これはポーキーの手による“制限”という物なのか。それとも、セリム自身に何らかの耐性があるのか―― もしかすれば、セリムには魔術の心得があるのかもしれない。だが話はそう簡単な物ではないのではないか、とジークが感じるのがもう一つの理由。 それは最初にセリムと出会った時、顔を合わせる直前に感じたもの。 恐怖に肌を灼かれるようだった、真っ黒い殺気。 微かに漏れ出ただけだが、あれは人に出せる物ではなかった。どちらかといえば、そう。夢の中でだけ出会ってしまう、あの邪悪な竜の気配にも似通った―― すぐに霧散したそれは、ジークの錯覚だったのではないかとも感じていたが……暗示が通じなかったのが制限ではなく、セリムがただの子供でないことに起因していたとすれば。 一つ一つの疑念は、そう気に留めるほどでもない物だ。しかし二つ重なれば、それはジークに警戒を促すに十分な要素となった。 だが、それがただの思い過ごしである可能性も捨てきれない。 ルーラーから他人の気持ちを理解するよう努力すべき、と咎められたのはつい昨日のことだ。 疑う要素はあるが、もしもセリムが本当にただの子供であったなら――不用意に傷つけるのも、望ましくはない。 だから、悪い奴に襲われた時には君を守ると、できり限り励ました。 ポーキーは両親に助けを求めることはできないと言った。ジークには……ある意味父親と呼べる存在だけはいると言っても良いが、彼よりも自分の方が強い以上、よりにもよって彼に助けを請うという発想はあまり出て来ない。 しかし、セリムは呼んでいた。父と母に、助けを求めていた。 残念ながら、ポーキーの言葉が真実なら、彼の両親が助けに来てくれるという可能性は望み薄だろう。 それでも、助けを求める声を自分は聞いてしまった。 求められたのは、自分ではないかもしれない。 だが届かないはずの声を聞いたのは、紛れもない自分なのだから。 そこから目を背けることに、きっと自分は耐えられない。 だから、その嘆きが本物であるのなら――せめてそれを止められるよう、ほんの少しだけでも力になってやりたい。 どんな場所だろうと、必ず助けは来るのだと思わせてやりたい――そんな気持ちもまた、真実だった。 庇護欲と警戒心という、相克する二つの感情を抱えながら。 ジークはセリムと共に、夜の中を歩んで行く。 互いに同族と気づかぬまま。 父たる創造主に叛逆し願いを叶えた少年と、父たる創造主のために己の欲望を押し込める少年と。 きっと相容れない二体の人造の命(ホムンクルス)達は、それでも今は同じ足並みで。 この先に待つ、胎動する運命へと向かっていた。 【C-3/深夜】 【プライド@鋼の錬金術師】 [状態]:健康、苛立ち(極小) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考・行動] 基本方針:未定。少なくとも今はまだ動かない。 1:ジークを利用する。 2:無害な参加者に紛れ情報を集める。 3:光源の確保。 4:しんのすけと再会してしまった時は状況を見極め、冷静に対処する。 【ジーク@Fate/Apocrypha】 [状態]:健康 [装備]:アストルフォの剣@Fate/Apocrypha [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:参加者を保護し、殺し合いを打破する。 1:セリムと同行するが、警戒は解かない。 2:黒のアサシンは早急に排除する。 3:魔術の秘匿についてどこまで徹底するかは、もう少し情報を集めてから考える。 ※原作第三巻終了時点からの参戦です。 ※『竜告令呪――デッドカウント・シェイプシフター――』残り三画。 ※暗示の魔術は制限されています。 ≪031 その赤き血は誰のため 時系列順に読む 035 暴走! チャージマン研!≫ ≪031 その赤き血は誰のため 投下順に読む 033 カードとカード≫ ジークの登場SSを読む xxx [[]]≫ ≪012 きらめく涙は星に プライドの登場SSを読む xxx [[]]≫